全てのクリエーター必見! 『SHIROBAKO』感想と考察。


SHIROBAKO感想こんばんは。息してるだけで幸せ。藤中です。
今回は日本が誇るハイクオリティ・アニメスタジオ、P.A.WORKSの『SHIROBAKO』について書いてみます。

『SHIROBAKO』とは。

題名の『SHIROBAKO』は、制作会社が納品する白い箱に入ったビデオテープを指す映像業界の用語である「白箱」に由来する。白箱は作品が完成した時に関係者が最初に手にすることができる成果物であり、本作は白箱の完成を目指して日々奮闘するアニメ業界の日常を、5人の夢追う若い女性を中心に描いた群像劇である(Wikipediaより引用)。
まあ、ざっくり、興味ある人は知っている、興味ない人は知らない、アニメ業界の話です。

ものづくりが仕事のクリエーターにおすすめ。

この作品、アニメファンの間では人気作ですが、一般の方は知らないかもしれません。作中、クリエーターとその周りとりまく人々が描かれています。
マニアックな業界の話ではありますが、普遍的なテーマが多く見受けられ、仕事を頑張っている人、仕事に悩んでいる多くの人が共感できる内容になっています。

アニメ的な記号に負けないでください。

この作品では実在のアニメスタッフがモデルのリアルなキャラクターが多数登場する反面、主人公たちは可愛らしいアニメ的なキャラクターになっています。
アニメを見なれていない人には、ちょっとだけハードルが高いわけです。
そんなキャラクターも3話くらい見ると違和感がなくなるので、最初はちょっと苦手かなと思っても、続けて見てほしいですね。

P.A.WORKSについて。

富山のP.A.WORKSというアニメスタジオは、地方でオリジナルアニメーションを手掛ける会社で、当初、京都アニメーションのフォロワーのような存在と感じていました。
このスタジオの特徴は、「ハイクオリティ」と「エモーショナルな作風」です。
P.A.WORKSの名前を世に知らしめた『true tears』から、一貫して、作家性のあるスタジオです。
この一貫した作風がブランディングになっており、どんどんフォロワーが増えていると思われます。

日本が誇るスタッフ陣。

この作品では、監督、脚本、演出、キャストとも、若手ばかりの挑戦的なスタッフではなく、ある程度実績のあるベテランスタッフが中心になっています。主題歌もベテランアニソン歌手を起用する徹底ぶり。
深夜枠の映像作品ですが、日本を代表する人たちの作品がTVで見られるのでラッキーです。

実はアニメ業界入門作品。

作中、2Dアニメーターが3Dアニメを拒絶する話があります。板野監督っぽい人が、「俺、今、3Dのアニメーターにジャパニメーションを教えてるよ」というシーンがあります。でも、板野監督が3Dに取り組み始めたのは、10年ぐらい前なんですね。
故金田 伊功さんが、『ファイナルファンタジー』のモーション監督をしていたのも、懐かしい話です。
主人公たちが3Dのリニアな中割を詰めるネタも、我々のような仕事でも知られた話です。
『FREEDOM』以降、『009 RE:CYBORG』『楽園追放』など、2Dライクな3D作品が一般的になっており、どの作品でも優秀な2Dのアニメーターが絵作りをしています。エフェクトで有名な橋本敬史さんの名前は、2D作品、3D作品問わずお見かけします。
今の2Dアニメーターは、とっくに3Dと折り合いをつけているんですね。

どこまでいってもアナログな人間関係がものをいうこと。自称原画マンや、いい加減なスタジオの存在も、昔も今も、これからも変わらないものでしょう。

この作品は、古今問わずアニメ業界の「あるある」を題材にしている、アニメ業界入門作品なのです。

水島 努監督について。

この監督の特徴を一言で云うと、「万能型で多産なヒットメーカー」です。ハリウッド監督で例えると、ロン・ハワードですね。
万能型だけに、作家性を語るのは難しいのですが、一つ挙げるなら、「テンポがよい、ハイスピードな演出」でしょうか。
この監督の作品は、とにかく見ていて気持ちがいい。
ギャグも得意で、見ていると、思わず笑ってしまうことが多いです。

『SHIROBAKO』はハイスピードな群像劇で、笑いあり、涙ありと、水島監督らしい作品です。

あまり重要ではないお金のこと。

アニメーターが薄給なのはある程度認知されているかもしれません。そして、『SHIROBAKO』という作品に、お金のことは重要ではありません。それでも、作中にお金のことも描かれています。

アニメ業界は実力主義で、売れたらお金が入ってくるシステム。でも、職種によって、お金を稼ぎやすいものもあるんですね。
庵野監督っぽい人が凄い家に住んでいるのは、誰でも納得できるのですが、僕は撮影監督がホームシアターで映画を見ているシーンが印象的でした。
モデルになった撮影監督や、監督、演出クラスになると、仕事はハードですが、しっかり家族を持てる経済力があります。
3Dアニメーターや仕上げも、お給料がしっかりもらえる仕事です。

厳しいのは、作品の根幹を担う2Dのアニメーター。
ベテラン2Dアニメーターが都内一戸建てに住んでいる描写があります。木造で築50年以上の家で、20代の頃に建てた家でしょう。2Dのアニメーターも、昔は普通の暮らしができたようですね。
「昔ならアニメーターは動画一枚書けば、屋台のラーメン一杯ぐらいは食べられた」というインタビュー記事を思い出します。

職人である以上、下積み時代は、なかなかお金にならないこともありますが、物価が上がっているのに、アニメーターの単価があまり変わってないことが、2Dアニメーターの生活が苦しい要因のひとつです。

それだけに、主人公の一人、安原 絵麻が初めて作画監督をしたときの「アニメーターで食べていけそうだよ」という台詞が胸にささります。

ウェブ業界との共通点と違う点。

同じクリエイティブな仕事ですが、ウェブクリエーターとアニメクリエーターはかなり違う仕事だと感じます。
特に違うのは、アニメ業界の作品に従事する“人数”とお金を超えた“こだわり”。
ウェブ業界なら、大規模なサイトでも、従事する人数は延べ20人ほどでしょう。ところがアニメ作品の場合、たった13話の作品でも、100人以上の人が関わります。
作中で描かれる、コミュニケーションロス、イレギュラーが頻発するのは当たり前。

こだわりは、人それぞれですが、ウェブの場合、「売る」「見てもらう」ことが目的の場合が多いのに対し、アニメの場合、すべからく「楽しんでもらう」「自分が納得できるものを作る」のが目的です。答えのない、ゴールのないものを追いかけるので大変です。

ウェブでも一部キャンペーンサイトや、オリジナルコンテンツの仕事をする場合、似たようなメンタルになりますが、少なくとも、優秀なクリエイティブならお金はしっかりもらえます。
アニメ業界は「むき出しのクリエイティブ」です。

まとめ。

この作品は優れた作品ですが、クリエーター、職人にとっては、自分の仕事を見つめなおすことになる、ともすれば、厳しい作品です。
最近、「仕事、流してるな~」と思うこともあり、心をあらためるきっかけになります。

今回はちょっと趣味に寄り過ぎた内容でしたね。では、さよなら~。